2012年9月5日更新

山城水文試験地 (YMS)


山城試験地広葉樹林内の気象観測タワー(左・尾根タワー、右・谷タワー)

試験地の概要

山城試験地は京都府南部の風化花崗岩地帯、木津川源流域の広葉樹林に位置する試験地です。かつて、この一帯は都市近郊林としての利用によって裸地化していましたが、約100年前にデレーケによって開始された緑化工事によって植生が回復しました。1980年代に松枯れの影響を受けた後、現在はコナラを優占樹種とした落葉広葉樹二次林が成立しています。このような二次林は京阪神、瀬戸内地域に広く分布しており、当試験地はこれらの森林におけるフラックス観測手法の開発及び内部動態の解明を目的として設置されました。この試験地の特徴としては、夏季に最高気温が35°Cを越える温暖な気候、複雑地形における空間変動特性の評価等を目的として尾根部と谷部に計2基のタワーが設置されていること等があります。また現在、山城試験地では森林生態系における炭素固定量の定量化及び炭素循環過程の解明を目的とし、周辺大学からの協力も得て、毎木調査や枯死木調査等といった生態学的調査の他、自動チャンバー法による長期連続観測、REA法による微量ガスフラックスの定量化等を行う一方、移流、細根や落葉等の特に呼吸活性の高い部位に注目した解析を行う等、幅広く積極的な取り組みを行っています。

試験地の位置

位置34 deg 47.687 min N (34.7948 deg N),
135 deg 50.770 min E (135.8462 deg E)
標高180-255m
傾斜0〜35°

試験地の気候

気候区分温帯多雨(Cfa)
年平均気温14.7°C(2000-2002年)
年間降水量1095mm(2000-2002年)
年平均日射量11.9MJm-2day-1(2000-2002年)


月平均気温と月間降水量(2000-2002年)

月平均日射量(2000-2002年)

観測対象生態系

種類暖温帯性広葉樹林
面積森林群落10km2 以上,生態学的調査面積1.7ha,水文学的集水面積1.6ha
フェッチ2km以上
主要構成種Quercus serrata(コナラ)、Ilex pedunculosa(ソヨゴ)、Lyonia elliptica(ネジキ)、Alnus Sieboldiana(オオバヤシャブシ)、Clethra barbinervis(リョウブ)、Eurya japonica(ヒサカキ)、Pinus densiflora(アカマツ)、Robinia Pseudo-acacia(ニセアカシア)など
群落高さ6m-20m、平均樹高 約12m
胸高直径平均胸高直径7.4cm、最大胸高直径50.2cm(ヒノキ)
樹齢現在確認されている最高樹齢アカマツ119年 (胸高直径34.8cm,2000年の伐倒調査による)
葉面積指数4.42(夏期)、2.70(冬期)(LAI-2000による)
群落構造上層、中層、下層
土壌タイプ未熟土、lm
人為攪乱の影響度居住地域や主要道路から2km以上離れている。

観測時期・頻度

時期1999年11月1日〜継続中
頻度連続

観測用施設

観測タワーの高さ尾根タワー26.5m、谷タワー35m
測器取付のために登ること可能
電源の種類商業電源 AC100V 60A
コミュニケーション用設備無し(携帯電話は使用可能)
滞在施設無し(公営キャンプ場まで2km)

微気象

測器
 測器名高さ
(上段:尾根タワー、 下段:谷タワー)
全天日射英弘精機 MR-22
Kipp&Zonen, CM-7B
26.2 m
36.1 m
反射日射英弘精機 MR-22
Kipp&Zonen, CM-7B
26.2 m
36.1 m
全天長波放射Eppley, PIR26.2 m
-
上向き長波放射Eppley, PIR26.0 m
-
純放射英弘精機, CN-1126.2 m
36.1 m
全天光合成有効放射LI-COR, LI190-SA26.2 m
-
反射光合成有効放射英弘精機 ML-02026.2 m
-
林内光合成有効放射観測無し-
林内日射英弘精機, MS-420.5 m
-
林内正味放射観測無し-
気温通風白金抵抗温度計
Vaisala HMP-45D
25.7, 14.2, 6.9, 5.3, 3.1 m
36.0, 20.0 m
気温(乾球温度)通風熱電対乾湿球温度計
プリード PFH-01
25.7, 20.0, 14.2, 8.9, 6.9, 5.3, 3.1, 1.0 m
36.0, 30.1, 25.6, 20.0, 16.0, 11.2, 6.0, 1.0 m
湿度通風静電容量湿度計
Vaisala HMP-45D
25.7, 14.2,6.9,5.3,3.1m
36.0,20.0m
湿度(湿球温度)通風熱電対乾湿球温度計
プリード PFH-01
25.7, 20.0, 14.2, 8.9, 6.9, 5.3, 3.1, 1.0 m
36.0, 30.1, 25.6, 20.0, 16.0, 11.2, 6.0, 1.0 m
風速SAT (Young, MODEL85000)25.7 m
-
牧野応用測器 AG-75025.7, 20.0, 14.2, 8.9, 6.9, 5.3, 3.1, 1.0 m
36.0, 30.1, 25.6, 20.0, 16.0, 11.2, 6.0, 1.0 m
風向Vector instruments W200P26.2m
36.1m
気圧観測無し-
地温熱電対温度計埋設深 0.05, 0.12, 0.19, 0.26 m
-
地中熱流英弘精機, MF-81埋設深 0.02 m
-
土壌水分TDR水分計;HYDRA HYD-10埋設深 0.05, 0.12, 0.19,0.26 m
-
積雪深観測無し-
地下水位観測無し-
降水時間観測無し-
降水量転倒枡式;0.5mm/pulse高さ10m、植被面の直上、生態学調査用タワーの頂部

ロガー

サンプリング周期10秒毎
平均値保存の場合の平均化時間5分
レコーダ江藤電気, CADAC-2およびパソコン
記録媒体HDD
記録方法バイナリ形式

乱流変動法(渦相関法)

測定方式クロ-ズドパス方式(尾根)
オープンパス式(谷)

測器

超音波風速温度計カイジョーソニック DAT-600-3T(尾根・谷)
(現ソニック)
センサースパン0.2m
高さ25.7, 36.1 m
植被面からの高さ10 m以上
ガスアナライザー
(クローズドパス)
LI-COR LI-6262(尾根) 吸引口から分析計までの距離約30m
吸引口の設置高さ25.7 m
植被面からの高さ10 m以上
風速測器と吸引口の距離0.3 m
ガスアナライザー
(オープンパス)
LI-COR LI-7500(谷) 設置高さ36.1 m
植被面からの高さ10 m以上
風速測器と吸引口の距離0.3 m

ロガー

サンプリング方法連続
平均化時間0秒
サンプリング周波数10Hz
aliasingを防ぐためのfilterの有無有り
filterのCutOff周波数24Hz
記録方法全てを保存
レコーダティアック DR-M3
記録媒体MO

フラックス計算方法

フラックスデータ計算時間1800s
解析方法トレンド除去除去対象 w,u,Ta,CO2,H2O
Coordinate rotation補正有り
Line averaging補正無し
Sensor separation補正無し
超音波風速計による顕熱Fluxの湿度影響の補正補正無し

キャノピー層内のCO2濃度鉛直プロファイル

測器名LI-COR LI-6262
校正ガス濃度0, 400ppm
サンプリング10秒
サンプリング周期1高度120s x 8高度
平均値保存の場合の平均化時間10s
レコーダパソコン
記録媒体HDD
記録方法テキスト形式
目的群落内・上のCO2濃度鉛直分布

簡易渦集積法

観測項目微量ガスフラックス

その他の方法(フラックス)

水収支法
降水量転倒マス式雨量計(池田計器 RT-5)
高さ10m
流出量フロート式水位計(池田計器 ATR-105)
谷地形(集水面積1.6ha)に設置した堰にて測定

気象以外の測定項目

光合成
測定方法陽樹冠の葉の光合成、蒸散速度,気孔コンダクタンスの日変化
測器LI-COR LI-6400
測定頻度年数回、気温,水蒸気飽差の異なる典型的な日変化を測定

土壌呼吸量

測定方法自動クローズドチャンバー法
測定頻度連続

落枝・落葉量

測定方法リタートラップ
測定頻度落葉期は1ヶ月に1度

生物量

測定方法樹木直径,樹高
測定頻度5年毎

樹液流速

測定方法ヒートパルス法
測定頻度連続

参考文献

  • KOMINAMI Yuji, JOMURA Mayuko, ATAKA Mioko, TAMAI Koji, MIYAMA Takafumi(2012): Heterotrophic respiration causes seasonal hysteresis in soil respiration in a warm-temperate forest. Journal of Forest Research, 17(3):296-304.
  • JOMURA Mayuko, KOMINAMI Yuji, ATAKA Mioko(2012): Differences between coarse woody debris and leaf litter in the response of heterotrophic respiration to rainfall events. Journal of Forest Research, 17(3):305-311.
  • MAKITA Naoki, HIRANO Yasuhiro, DANNOURA Masako, KOMINAMI Yuji, MIZOGUCHI Takeo, ISHII Hiroaki, KANAZAWA Yoichi (2009): Fine root morphological traits determine variation in root respiration of Quercus serrata. Tree Physiology, 29(4):579-585
  • KOMINAMI Yuji, JOMURA Mayuko, DANNOURA Masako, GOTO Yoshiaki, TAMAI Koji, MIYAMA Takafumi, KANAZAWA Yoichi, KANEKO Shinji, OKUMURA Motonori, MISAWA Noriko, HAMADA Shogo, SASAKI Taizo, KIMURA Hitoshi, OHTANI Yoshikazu (2008): Biometric and eddy-covariance-based estimates of carbon balance for a warm-temperate mixed forest in Japan. Agricultural and Forest Meteorology, 148(5):723-737
  • KOMINAMI Yuji, MIYAMA Takafumi, TAMAI Koji, NOBUHIRO Tatsuhiko, GOTO Yoshiaki (2003): Characteristics of CO2 flux over a forest on complex topography. Tellus B, 55(3):313-321
  • DANNNOURA Masako, KOMINAMI Yuji, OGUMA Hiroyuki, KANAZAWA Yoichi (2008): The development of an optical scanner method for observation of plant root dynamics. Plant Root, 2:14-18
  • JOMURA Mayuko, KOMINAMI Yuji, DANNOURA Masako and KANAZAWA Yoichi (2008): Spatial variation in respiration from coarse woody debris in a temperate secondary broad-leaved forest in Japan. Forest Ecology and Management, 255(1):149-155
  • TAMAI Koji, KOMINAMI Yuji, MIYAMA Takafumi, GOTO Yoshiaki, OHTANI Yoshikazu (2008): Topographical Effects on Soil Respiration in a Decious Forest -The Case of Weathered Granite Region in Southern Kyoto Prefecture-. 農業気象, 64(4):215-222
  • MIYAMA Takafumi, KOMINAMI Yuji, TAMAI Koji, GOTO Yoshiaki, Teruhiko Kawahara, JOMURA Mayuko, DANNOURA Masako (2006): Components and seasonal variation of nighttime total ecosystem respiration in a Japanese broadleaved secondary forest. Tellus B, 58(5):550-559
  • 後藤義明、小南裕志、深山貴文、玉井幸治、金澤洋一 (2003): 京都府南部地方における広葉樹二次林の地上部現存量及び純生産量. 森林総合研究所研究報告, 2(2):115-147

研究予算

  • 農林水産省林野庁 緊急重要施設(二酸化炭素動態観測施設)整備費
  • 森林総合研究所 交付金プロジェクト費
  • 農林水産省 環境研究費
  • 文部科学省 科学技術振興調整費
  • 文部科学省 科学研究費補助金
  • 環境省 地球環境保全試験研究費

研究者

小南裕志、深山貴文、玉井幸治

協力研究者

東野達、奥村智憲、檀浦正子、安宅未央子(京都大学)、牧田直樹、松本晃、吉村謙一(神戸大学)、上村真由子(日本大学)

連絡先

森林総合研究所
関西支所森林環境研究グループ
612-0855 京都市伏見区桃山町永井久太郎68
TEL: 075-611-1201(代)
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